私は今、リードザセルフジャパンという自分の会社とは別に、「オーク販売」という会社の代表も務めています。長野県に拠点がある、次亜塩素酸水――空間の除菌や消臭に使う水――と、その水を作る機器を売っている会社です。創業26年。この会社を、2024年4月11日に前オーナーから引き継ぎました。「なんで次亜塩素酸水?」とよく聞かれます。正直に言うと、もともとこの商品に思い入れがあったわけではありません。私のキャリアとも、まったくつながらない。でも、そこに至るまでには、それなりの理屈があります。これ、何のための仕事なんだろう私は東急電鉄に約20年勤めていました。渋谷駅周辺の開発や商業施設の企画など、プロジェクトマネジメントが仕事の中心です。線表を引いて、役割を分担して、期限を追う。嫌いな仕事ではなかったし、そこそこうまくいっていたと思います。ただ、職責が上がるにつれて、ルールや会社の都合で仕事が振り回されることが増えていきました。最前線の現場から離れると、お客さんの声を自分で聞けなくなる。「お客さんはこう思っているはずなのに、会社の都合でそれができない」ということを、現場に説明しなければいけない。これ、何のための仕事なんだろう。そういう場面が、コロナの少し前から徐々に増えていました。そこにコロナが来ました。物理的にも心理的にも、会社との距離ができた。それまで「この会社が潰れるかもしれない」なんて一度も思ったことがなかったのに、初めてそれを思った。だったら自分も自立しないといけない。そう考えて、副業から始めて、やがて独立しました。10年に1回、何かが起こるもう一つ、当時考えていたことがあります。コロナは「100年に1度の環境変化」と言われましたが、よく考えるとその10年前には東日本大震災があり、その10年前にはITバブルの崩壊、さらに10年前にはバブルの崩壊がある。要は10年に1回くらい、何かが起こっている。当時私は43歳。生きているうちに、あと2回は来る。このままだと、次の大きな変化を「いい波が来たぞ」と笑って迎えられない。そう思ったときに、変わらないといけないという感覚がはっきりしました。とはいえ、できることは大してない。じゃあ早起きするか。大きなストーリーは、そんなところから始まっています。ゼロを一にする人、五を十にする人独立して自分の会社をやっていた頃、次に何をするかをずっと考えていました。そこで気づいたことがあります。自分でアイデアを作って、世の中に訴求して、ゼロから一を作り、それを十にする。そういう難しさがある。一方で、すでに走っているビジネスを引き受けて、一旦は五が四になるかもしれないけれど、じわじわと八や十にしていく。この二つがあるとしたら、サラリーマンは後者向きだと思うんです。だって、ゼロから立ち上げていくぜ、ができる人なら、とっくにやっている。それができないからサラリーマンをやっているわけで。私もそうです。どちらが正しいとか、どちらが上とかではなくて、プロジェクトを回してきた人間にとっては、こっちの方がやりやすい。それだけの話です。2021年、民泊とレンタルルームから始まった事業承継のプラットフォームを見始めたのは、たしか2021年。まだコロナの最中です。最初に検討したのは民泊やレンタルルームでした。そこから丸二年、いろいろな案件を見て、何件かは実際に交渉もしました。うまくいかなかった話は、次回に書きます。ただ、その間に自分の「軸」ははっきりしていきました。在庫をあまり持たないこと。場所に縛られないこと。そしてBtoBで、すでに一定のお客さんがいて、売上がある程度見込めること。その軸で見ていたときに、「こういう案件がありますけど」と紹介されたのが、長野の次亜塩素酸水の会社でした。ここから買収まで、約半年。次回は、初回面談から2024年4月11日までに何があったかを書きます。※ 本コラムの内容は2025年3月時点のものです。